なぜあの子は美人でもないのに予約が埋まるのか?──メンズエステの「売れる」を考える
質問
同じお店に、ものすごく美人というわけでもないのに、いつも予約が埋まっているセラピストさんがいます。SNSもそれほど派手ではないし、ものすごく際どい施術をしている感じでもありません。でも、なぜかリピーターが多くて、出勤するとすぐ予約が埋まります。
一方で私は、見た目にもそれなりに気をつかっているし、SNSも更新しているし、接客もちゃんとしているつもりです。それなのに、思ったほど指名が増えません。
メンズエステで人気セラピストになる人と、なかなか指名が増えない人って、いったい何が違うのでしょうか?
回答

1.「美人だから売れる」は、半分正しくて半分間違っている
メンズエステで働いていると、どうしても容姿を気にするようになると思います。
「あの子は美人だから指名される」「あの子はスタイルがいいから予約が埋まる」「私はもう若くないから不利なのかな」。
そう思ってしまうのも無理はありません。実際、初めてお店を利用する男性がプロフィール写真を見てセラピストを選ぶ以上、容姿がまったく関係ないと言えば、それはさすがに嘘でしょう。
かわいい、美人、スタイルがいい、自分の好みのタイプである。そういった外見的な要素は、最初の予約を取るうえでは確かに強い武器になります。
でも、不思議なのはここからです。
メンズエステのお店をしばらく見ていると、「ものすごい美人なのに、なぜかリピーターが少ない人」がいる一方で、「失礼ながら、そこまで圧倒的な美人というわけでもないのに、なぜかいつも予約が埋まっている人」がいます。
なぜなのでしょうか。
おそらく、最初の予約を生み出すものと、二回目、三回目の予約を生み出すものは違うからです。
写真を見て「この人に会ってみたい」と思わせる力と、実際に会ったあとで「もう一度この人に会いたい」と思わせる力は、まったく同じではありません。
ここを分けて考えると、メンズエステにおける「売れる」ということが少し違って見えてきます。
2.リピーターが買っているのは「美人との90分」だけではない
では、お客さんは何にお金を払っているのでしょうか。
もちろん施術です。オイルマッサージを受けたいとか、きれいな女性に癒やされたいとか、日常では味わえない時間を過ごしたいとか、いろいろあるでしょう。
でも、リピーターになるお客さんは、たぶんそれだけを買っているわけではありません。
そのセラピストと一緒にいるときの「自分」を買っているのだと、私は思います。
これはどういうことでしょうか。
たとえば会社では、いつも部下に指示を出している男性がいます。家庭に帰れば父親であり、夫であり、いろいろな責任を背負っています。取引先では頭を下げることもあるでしょうし、会社では弱音を吐けないこともあるでしょう。
つまり人間は、どこにいても何らかの「役割」を演じています。
ところが、あるセラピストの前にいる90分だけは、その役割から降りることができる。
くだらない話をしても笑ってくれる。仕事の愚痴を言っても説教されない。ちょっと格好悪い自分を見せても、それを否定されない。
そういう時間を経験した男性は、「またあの子に会いたい」と思います。
これは「美人だから会いたい」とは、少し違う欲望です。
「彼女の前にいる自分が好きだから、また会いたい」。
人気セラピストやリピーターの多いセラピストには、案外この力があるのではないでしょうか。

3.人気セラピストは「いい女」を演じすぎない
指名を増やしたいと思うと、多くの人は「もっといい女にならなくちゃ」と考えます。
もっと笑顔でいよう。もっと優しくしよう。もっと色っぽくしよう。もっと会話を盛り上げよう。SNSも毎日更新しよう。
もちろん、どれも間違いではありません。
ただし、それをやりすぎると、ある問題が起きます。
みんな同じ人になってしまうのです。
「今日は来てくれてありがとう」「お仕事大変だったんだね」「また会いに来てね」。
どれも悪い言葉ではありません。でも、誰もが同じような接客をして、同じような写真をSNSに載せ、同じような言葉を使っていたら、お客さんから見れば違いがわからなくなります。
人気が出る人というのは、意外と少し変です。
よく笑う人もいれば、静かな人もいる。おしゃべりな人もいれば、人の話を聞いているほうが好きな人もいる。ちょっと毒舌だったり、妙な趣味があったり、変なところで笑ったりする人もいる。
でも、それでいいのです。
人間が人間を好きになるとき、完璧だから好きになるとは限りません。
むしろ「この人、なんか変だな」という小さな引っかかりが、その人を忘れられなくすることがあります。
人気セラピストになろうとして「理想のセラピスト」を演じすぎると、かえってその人自身が消えてしまう。これは少し皮肉な話です。
4.「会話が上手」と「よくしゃべる」は違う
メンズエステで指名を増やす方法として、よく「会話力を磨きましょう」と言われます。
すると、「何か面白いことを話さなければ」と考える人がいます。
でも、私は少し違うと思います。
会話が上手な人とは、たくさんしゃべる人ではありません。相手が自然にしゃべれる空間をつくれる人です。
人間は、自分のことを気持ちよく話せた相手に対して、「あの人とは話が合う」と感じる傾向があります。
考えてみれば不思議ですよね。
自分ばかりしゃべっていたのに、「あの子とは話が合う」と思って帰っていく。
でも、人間とは案外そういうものです。
だから無理に面白い話を用意する必要はありません。
「それってどういうこと?」「そのあとどうなったの?」「それ、けっこう大変じゃない?」
そんなふうに相手の話に少しだけ興味を持つ。
重要なのは質問のテクニックではなく、「あなたの話をもう少し聞いてみたい」という態度です。
人は、自分に関心を向けてくれる人に心を開きます。
これはメンズエステに限った話ではありません。恋愛でも、友人関係でも、商売でも同じです。

5.お客さん全員に好かれようとしなくていい
ここはかなり重要だと思います。
指名が少ないと、「もっと多くのお客さんに好かれなくちゃ」と思います。
でも、本当にそうでしょうか。
100人全員から70点をもらう人より、20人から100点をもらう人のほうが、メンズエステでは強いことがあります。
なぜなら、その20人がリピーターになってくれるからです。
あるお客さんには「しゃべりすぎ」と思われる。でも別のお客さんは「この子と話すと元気になる」と思っている。
ある人には「ちょっと冷たい」と思われる。でも別の人には「変に媚びてこないから楽」と思われる。
それでいいのです。
人間には相性があります。
だから、「誰からも嫌われないセラピスト」を目指すより、「私を好きな人にはものすごく好かれるセラピスト」を目指したほうがいい。
そのほうが本人も疲れません。
そして不思議なことに、自分を無理に作らなくなった人のほうが、人から好かれることがあります。
6.「売れる」とは、誰かの記憶に残ること
商売というと、数字の話になります。
指名本数、リピート率、客単価、出勤時間、SNSのフォロワー数。
もちろん数字は大切です。メンズエステで収入を増やしたいのであれば、数字をまったく無視することはできません。
でも、その数字が生まれる少し前に、もっと曖昧なものがあります。
「なんとなく、また会いたい」。
これです。
人はいつも合理的にお店を選んでいるわけではありません。
「あの子、なんかよかったな」。
その「なんか」を持っている人が強い。
では、その「なんか」とは何でしょう。
私は、その人にしかない身体の使い方や声の調子、笑い方、会話の間、考え方、少し不器用なところ、そういったものが全部混ざったものだと思います。
だから簡単にはマニュアル化できません。
むしろ、マニュアルから少しはみ出したところに、その人の魅力は現れます。

7.売れないときほど、自分を削らないこと
予約が入らない日が続くと、自信をなくします。
もっと痩せたほうがいいのかな。もっと際どい写真を載せたほうがいいのかな。もっとSNSを頑張ったほうがいいのかな。もっとお客さんに合わせたほうがいいのかな。
そうやって少しずつ自分を削っていく人がいます。
でも、私はそれをあまりおすすめしません。
もちろん改善は必要です。プロフィール写真を変える、接客を振り返る、出勤時間を見直す。そういう工夫はすればいい。
でも、「今の私では価値がない」というところまで行ってしまう必要はありません。
あなたを選ばなかったお客さんは、あなたの価値を否定したのではありません。
単に、その人とあなたの間に縁がなかっただけかもしれない。
商売をしていると、この区別がとても難しくなります。
売上が自分の価値に見えてしまうからです。
でも、売上は売上です。あなたはあなたです。
そこを一緒にしてしまわないほうがいいと思います。
8.美人より強いものが、たぶんある
もちろん、美人は強いです。
若さも武器になります。スタイルのよさも、写真映えも、メンズエステでは立派な商品価値でしょう。
でも、それらにはひとつ弱点があります。
もっと美人な人が現れます。
もっと若い人も現れます。もっとスタイルのいい人も、もっとSNSが上手な人も現れます。
そこだけで競争していたら、いつまでも安心できません。
でも、「この人といると、なぜか自分に戻れる」という感覚は、簡単には代替できません。
だから、もしあなたが今、「美人じゃないから指名が取れない」「若い子には勝てない」「人気セラピストにはなれない」と思っているのであれば、少しだけ違うところを見てみてください。
あなたと一緒にいるとき、お客さんはどんな顔をしていますか。
よくしゃべりますか。よく笑いますか。それとも安心したように黙っていますか。
その中に、あなたの答えがあるかもしれません。
メンズエステで「売れる」ということは、たくさんの男性から評価されることだけではありません。
誰かひとりに、「またこの人に会いたい」と思ってもらうこと。
そして、その「また」が少しずつ積み重なっていくこと。
人気というのは、案外そういう静かなものなのだと思います。
だから、あの子は今日も予約が埋まっている。
ものすごい美人だからではなく、あの子に会った誰かが、帰り道でふと思うのでしょう。
「また、あの子に会いたいな」と。
商売の本質というのは、もしかすると、そのくらい単純なものなのかもしれません。
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