お客さんの前では別人です。それって「嘘の自分」なのでしょうか?

質問
メンズエステでセラピストをしています。私はお客さんの前にいるときと、普段の自分がかなり違います。
仕事ではよく笑うし、お客さんの話もよく聞くし、「会えてうれしい」とか「また来てね」と自然に言えます。でも、本当の私はどちらかというと人見知りです。休みの日はひとりでいるのが好きだし、そんなに愛想がいい人間でもありません。
最近、「お客さんの前にいる私は演技なんじゃないか」「本当の自分ではないのに、お金をもらって好かれているのってどうなんだろう」と思うことがあります。
接客のために別の自分を演じることは、嘘をついていることになるのでしょうか?
回答
1.たぶん、みんな少しずつ別人です
結論から言えば、私はまったく問題ないと思います。
というより、人間はそもそも、相手によって少しずつ違う人になっています。
お母さんと話しているときのあなたと、親友と話しているときのあなたは同じでしょうか。彼氏と一緒にいるとき、コンビニの店員さんと話すとき、初対面の人と話すとき。それぞれ少しずつ違うはずです。
言葉遣いも違うでしょう。声の高さも違うかもしれません。笑い方だって微妙に違う。
でも、そのうちのどれかだけが「本当のあなた」で、それ以外が全部偽物なのでしょうか。
私はそうは思いません。
どれもあなたです。
人間には、たったひとつの「本当の自分」が身体の奥深くに隠れていて、それ以外は全部演技である、というほど単純ではないと思うのです。

2.「接客している私」も、ちゃんと私です
メンズエステの接客では、ある程度の演技が必要でしょう。
疲れていても笑顔を見せる。あまり興味のない話でも聞く。いつもより少し明るい声で話す。
それは確かに、家でひとりでいるときのあなたとは違います。
でも、考えてみれば会社員だって同じです。
上司に「おはようございます」と言うとき、寝起きそのままのテンションで話す人はあまりいません。美容師さんも、飲食店の店員さんも、ホテルのスタッフも、それぞれ「仕事をしている自分」を持っています。
仕事には仕事の顔があります。
メンズエステのセラピストだけが特別なのではありません。
むしろ、仕事というものは多かれ少なかれ「普段とは違う自分」を使ってするものなのだと思います。
だから、お客さんの前で明るく振る舞っているからといって、それをすぐに「嘘」と考えなくてもいいのです。
3.そもそも「本当の自分」って何でしょう
ここで少し変なことを考えてみましょう。
あなたが「接客している私は本当の私じゃない」と思うのであれば、では、本当のあなたはどこにいるのでしょうか。
家で寝転びながらスマホを見ているあなたでしょうか。
親友とくだらない話をして大笑いしているあなたでしょうか。
彼氏と喧嘩して泣いているあなたでしょうか。
あるいは、お客さんの前で笑っているあなたでしょうか。
たぶん全部です。
人間というものは、「これが本当の私です」と一枚の写真のように固定できるものではありません。
誰と一緒にいるか、どこにいるか、何をしているかによって、違う自分が出てきます。
それは嘘なのではなく、人間がもともとそういう存在だからです。
むしろ「私はこういう人間だから」と自分をひとつに決めてしまうほうが、不自然なのかもしれません。

4.問題なのは「演じること」ではなく「演じ続けて苦しくなること」
ただし、ひとつ注意してほしいことがあります。
接客で別の自分を演じること自体は問題ありません。
でも、その自分を演じ続けることが苦しくなっているのであれば、少し考えたほうがいい。
たとえば、本当は静かな性格なのに、「人気セラピストは明るくてノリがよくなくちゃ」と思い込んで、毎日テンションの高い女性を演じている。
これは疲れるでしょう。
本当は人の話を聞くのが好きなのに、「私が会話を盛り上げなくちゃ」と一生懸命しゃべり続ける。
これも疲れます。
演じる自分と普段の自分があまりにも遠くなると、仕事が終わったときにどっと疲れます。
だから、接客を長く続けるためには、仕事の自分を普段の自分に少し近づけていくことも大切です。
静かな人なら、静かなセラピストでいい。
無理に面白いことを言えない人なら、聞き上手になればいい。
あなたの性格そのものを、接客の強みにしてしまえばいいのです。
5.「お客さんに好かれる私」を嫌わなくていい
もうひとつ、私は大切なことがあると思います。
お客さんから人気が出ると、ときどき妙な罪悪感を持つ人がいます。
「この人は本当の私を知らないから好きなんだ」
そう思ってしまう。
でも、それも少し違うと思います。
お客さんは、あなたのすべてを知るためにメンズエステに来ているわけではありません。
あなたも、お客さんのすべてを知っているわけではないでしょう。
お互いに人生のほんの一部分だけを見せ合っている。
それでいいのです。
人間関係というものは、そもそもそういうものだからです。
親友ですら、あなたのすべてを知っているわけではありません。恋人だって、親だって同じです。
人はいつも相手の一部分と関係を結んでいます。
だから、お客さんが「セラピストとしてのあなた」を好きになったとしても、その好意が偽物になるわけではありません。
その時間にあなたが笑ったことも、相手の話を聞いたことも、その人が少し元気になって帰ったことも、全部本当に起きたことです。

6.ただし、自分まで騙してはいけない
演じることと、自分を騙すことは違います。
ここは分けて考えたほうがいいでしょう。
本当は嫌なのに「全然平気」と思い込む。本当は傷ついているのに「仕事だから」と感じないふりをする。本当は断りたいのに「お客さんだから仕方ない」と受け入れる。
これは少し危険です。
お客さんに見せる顔をつくることはあっていい。
でも、自分の気持ちまで仕事用に加工する必要はありません。
嫌なものは嫌。
疲れたものは疲れた。
今日は楽しかったなら、楽しかった。
そのくらい、自分に対しては正直でいたほうがいいと思います。
接客とは、お客さんに自分のすべてを差し出すことではありません。
見せる部分と、見せない部分を自分で決めることでもあります。
7.人は「関係」の中で違う自分になる
私は、人間というのは面白いものだと思います。
ひとりでいるときには出てこなかった自分が、誰かと一緒にいることで突然出てくることがあります。
普段は無口なのに、ある人といるとよくしゃべる。
自分では冷たい性格だと思っていたのに、ある人にはとても優しくできる。
「私はこんなふうに笑う人だったんだ」と、誰かと出会って初めて知ることだってあります。
だとすれば、メンズエステで接客しているあなたも、単なる作り物ではないのでしょう。
お客さんとの関係の中で生まれた、ひとつのあなたです。
普段のあなたとは少し違う。
でも、確かにあなたの中から出てきた人です。
だったら、その人をそんなに嫌わなくてもいいのではないでしょうか。

8.「本当の私」をひとつに決めなくていい
お客さんの前ではよく笑う私。
家では誰とも話したくない私。
友達の前ではくだらないことで笑う私。
仕事では少し色っぽく振る舞う私。
全部あっていいと思います。
どれかひとつを選んで、「これだけが本当の私です」と決めなくてもいい。
むしろ、いろいろな自分を持っていることが、人間の豊かさなのではないでしょうか。
だから、接客している自分を「嘘の自分」と呼ばなくていいと思います。
それは、あなたがお客さんとのあいだにつくった、もうひとりのあなたです。
ただし、仕事が終わったら、その人をちゃんと休ませてあげてください。
化粧を落とすように、接客用の自分もいったん脱いでいい。
そして次の出勤の日になったら、またその人と一緒に仕事へ行けばいい。
本当の自分とは、ひとつではありません。
たぶん私たちは、誰かと出会うたびに少し違う自分になりながら生きているのです。
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