他者の欲望? セラピストの仕事をしてたら病んできました

●質問
メンズエステのセラピストの仕事をしたら、病んできました。自分が本当は何をしたいのかがよくわからないのです。たくさん接客して指名客をいっぱいとって、もっと稼ぎたいと思う日もあれば、そんなことはしたくないと思う日もあります。また、ある日急にブランド品を爆買することもあれば、そのことを後悔する日もあります。自分が何を考えているのかよくわかりません。どうすればよいでしょうか?
●回答
「他者の欲望」という言い方があります。フランス哲学界の巨匠であるジャック・ラカンが言い出した言葉です。「私たちは他者の欲望を欲望している」と彼は言います。つまり、自分が「ブランド物が欲しい」と心底本当に思っているのではなく、テレビで見るあの芸能人がそれを持っており、私はその芸能人に憧れているから、彼女と同じものを身につけたいと思う、というのを他者の欲望といいます。
あるいは、友達「みんな」が〇〇を持っているから私も〇〇を買いたいと思う、というのも、他者の欲望を生きているひとつの例です。

他者の欲望を欲望するから病む
つまり、私たちは日常的に「〇〇がしたい」とか、「〇〇が欲しい」と思いますが、そのルーツをたどれば、実は自分はそこまで欲しいと思ってるわけではないのだけれど、周りの人が持っているから自分もそれをとりあえず持っておかないと具合が悪いのではないか、といった思考をしているということです。
ご質問者さんは、まさにその典型ではないかと思います。つまり、自分が本当は何をやりたいのか、何が欲しいのかというのが分かっていないということです。だから、より時給の高いメンズエステ業界で働いて、とりあえずお金だけは人並みかそれ以上に持っておこうと思う。しかし、実はあなたは、そこまでお金に固執する人間ではないので、ある時急に「こんなしんどい思いをしながらお金を稼がなくてもいいのではないか」と思う。だから、「お金なんか使ってしまえ」と思ってブランド品を買ってしまう。そのブランド品は自分がどうしても欲しいものではなく、「これを持っていたら周りの女子たちにすごいと思われるかもしれない」という動機で買った。だからある日、ブランド品に何十万円も使った自分を後悔する、ということになるのです。
安定したメンタルで暮らすために
では、どうすれば安定したメンタルで安定的に暮らしていくことができるのでしょうか?
これまでの話から、答えは1つしかないと私は思います。
つまり、自分が本当は何をしたいのかというのを自分で知ることによって、メンタルが安定してくると言えるのではないでしょうか。それはなにも難しいことでもありません。
私たちは――特に日本人は、自分が本当に思っていることを心の奥の方に隠そうとします。確実にそういった傾向を持っています。朝の「めざましテレビ」で「今、若い女子の間でこれが流行っています」と言われたら、それを買いに走って、とりあえずみんなと同じ格好をするみたいなことが流行っているということです。
「それ、本当に欲しい?」と考えてみるのです。そうすることによって、他者と全然違う人間になってしまって、仲間に入れてもらえなくなるのではないか? いじめられるのではないか? と心配する人もいると思いますが、そんなことは100%ありません。
他人というのは、あなたが何をしようと、「この子はそういう人なのだ」と思うだけです。それであなたのことをいじめてくるような人は、あなたの真の友達ではないのだから、縁を切ればいいのです。

わたしたちの日常とは
私たちはふつう、半径30mぐらいのとても狭い世界で暮らしています。そこから1歩外に出ると、ものすごく多種多様な人がいることに気づかされます。
例えば、オーケストラの演奏を一度聞きにいかれるといいと思います。舞台の上に乗っている100人くらいの人たちは、みなさん音楽大学を卒業しています。人によっては3歳くらいから楽器をはじめ、ほとんどそれ以外のことは何もやってこなかったような人たちです。
学校の体育の授業は「指を怪我したらいけないから」という理由で欠席します。学校の定期試験は「ピアノのコンクールがあるから」という理由で欠席します。有名な先生のレッスンがあるからという理由で学校を早退します。もうはっきり言ってむちゃくちゃです。
しかし、そういった人も現に、この世の中にいて、ふつうに暮らし(ドンキであれやこれやを買ったりしながら)、あなたと同じ空気を吸っているわけです。
他者の欲望に飲み込まれないようにしようと思えば、自分は実は何を思ってるのか、何を感じているのかを知る必要があります。それは、行動をする時に一呼吸置いて、「私は本当にそれをしたいと思っているのだろうか?」と自問自答することで、ある程度どうにかできることです。ぜひ自問自答してください。
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