●質問
メンズエステで働いています。「本番したい」としつこく言ってくるお客さんや、「なんでこんなところで働いてるの？ 親が悲しむよ」と説教してくるお客さんが本当に苦手です。仕事だから多少は我慢しなければと思っても、頭の中にその言葉が残ってしまって、家に帰ってからも心が重くなります。どう対応すればいいでしょうか？また、こうした人たちを気にしすぎて疲れてしまう自分にも落ち込みます。

●回答
1．どんな世界にも「不躾な人」は存在する
まず最初に知っておいてほしいのは、「理不尽な人」「無神経な人」は、どんな仕事の世界にもいるという事実です。メンズエステだから特別なのではなく、病院にも学校にもオフィスにも、かならず「人の心に鈍感な人」がいます。

そうした人たちは、他人を傷つけることでしか自分の存在を確かめられないのです。
たとえば、飲食店のクレーマーは「自分が正しい」と主張することで、自分の小さなプライドを支えています。そして、あなたに説教する男性もまったく同じ構造の中にいます。

「きみはもっとましな仕事をできるはずだ」と言うその言葉は、あなたへの評価ではなく、彼が自分を保つための独り言なのです。

だから、あなたがその言葉に深く反応してしまう必要はありません。それはあなたの存在価値を語っているのではなく、彼の“生き方の限界”を語っているだけだからです。

2．ウザい発言の正体──自己否定の裏返し
人は、自分の中に抱えた不安や劣等感を、ときに他人への攻撃や説教という形で外に出します。「こんなところで働いて」などという言葉の背後には、「自分はもっと良い人生を歩めたはずだったのに」という後悔や羨望が潜んでいる。

つまり、そのお客さんは、あなたに嫉妬しているのです。若さや清潔さ、素直さ、努力の気配――それらを無意識に感じ取り、「自分にはもう手に入らない」と悟った瞬間、人は他人を攻撃したくなるのです。

心理学的には、これは投影（projection）と呼ばれる心の防衛反応です。彼があなたに放った否定的な言葉は、本当は彼自身の内側にある“欠乏”を言語化したもの。そう理解すると、あの人の言葉が少し軽く見えてきませんか。

3．「反応しない力」は、成熟のしるし
ウザい人に出会うたびに、「どうしてあんなこと言われなきゃいけないの」と思うのは自然なことです。
しかし、そこで感情的に反応してしまうと、その瞬間に“あなたの世界”の主導権を相手に渡してしまいます。反応しないというのは、冷淡になることではありません。相手の不快な言葉を、あなたの内側に侵入させない境界線を引くということです。

たとえば、こう言われたときに――

「こんな仕事してて親は悲しまないの？」

あなたが返すべきは怒りでも弁明でもなく、

「そうかもしれませんね。でも、私はこの仕事を通して学べることが多いんです」

という静かな一言です。

その言葉は、論破ではなく“自分の軸”の提示です。
あなたが軸を保てば、相手の不安定な言葉は自然に力を失います。

4．「気にしない力」は才能ではなく訓練

「気にしない人になりたい」と思う人は多いですが、気にしないというのは生まれつきの性格ではなく、日々の意識の練習で身につくスキルです。

たとえば、次のような習慣を持ってみてください。

嫌な言葉を聞いた瞬間に、頭の中で「これはこの人の問題」と心のラベルを貼る。

家に帰ってからは、嫌な人の言葉よりも「今日うれしかったこと」を3つ思い出す。

翌朝、鏡の前で「私は私を守る」と小さくつぶやく。

こうした“意識の矛先の切り替え”を毎日続けると、心の回復スピードが確実に早くなります。

「気にしない」というのは、無関心ではありません。
それは、“何を大事にするか”を自分で選ぶという意志の表れなのです。

5．誰を見て生きるかで、人生の温度が変わる
人は、見つめる対象に少しずつ似ていく生き物です。
不平不満を口にする人を見続けると、自分の言葉まで少しずつ濁っていきます。

だから、どうでもいい人のことは意識から外して、あなたを応援してくれる人、支えてくれる人、尊敬できる人を見てください。

どんな人を見て生きるか――それが、そのままあなたの人生の空気を決めます。

ウザいお客さんの言葉を心の中心に置いてしまうと、その人たちの世界観が、あなたの中に根を張ってしまいます。あなたの世界を濁すような言葉には、関心を向けないこと。それは“逃げる”のではなく、自分を美しく保つための知恵です。

6．「逃げる」は、立派な判断力
接客業に携わる人の多くが、「我慢こそプロ意識」と思い込んでいます。
けれど、危険を感じたり、言葉の暴力を受けたりしたときは、迷わず距離を取りましょう。

「逃げる」は“弱さ”ではなく、“判断力”です。あなたが不快な人から離れることで、あなたの笑顔を待っている別のお客様を守ることにもつながります。

安全と尊厳を守ることは、どんな職業でも最優先事項です。勇気とは、立ち向かうことだけではなく、きちんと退くことを選ぶ力でもあります。

7．「ウザい人」はあなたを成長させる鏡
人生の中で出会う“嫌な人”の多くは、じつはあなたの成長を促す「鏡」のような存在です。

彼らを通して、
「自分はあんな言い方をしないようにしよう」
「私は人の気持ちをもっと丁寧に扱いたい」
と気づけるのなら、その出会いにも意味があります。

反面教師というのは、あなたの内側の“優しさの基準”を磨いてくれる存在なのです。

8．心を守ることは、仕事の一部
メンズエステの仕事は、「人の体を癒す」だけでなく、「人の心を受け止める」仕事でもあります。だからこそ、あなた自身の心が疲弊してしまえば、誰かを癒すことはできません。

自分の心を守ることは、わがままではなく、プロとしての義務です。お客様に優しさを向けるために、まずは自分に優しくあること。これを忘れてはいけません。

たとえ嫌な言葉に傷ついた日があっても、「私は今日も誰かを癒した」という事実が残るなら、それで十分です。

9．最後に──「気にしない」とは、選び取ること
ウザいお客さんを変えることはできません。でも、彼らの言葉にどれだけの価値を与えるかは、あなたが決められます。
「気にしない」というのは、忘れることではなく、“何を心に残すかを選ぶ”という大人の知性です。

あなたが選んでいい。
誰の声を聞くか、どんな言葉を信じるか。
それを自分で選べる人が、最後にいちばんしなやかに生き残ります。

あなたは、ウザい人の言葉で作られる人ではありません。
あなたは、あなたが見つめる人たちによって形づくられる人です。