指名のお客様に依存してしまう。「必要とされること」がうれしすぎる時に考えたいこと

「君じゃなきゃダメ」と言われるとうれしい
メンズエステで働いていて、何度も自分を指名してくれるお客様ができる。
これは、やっぱりうれしいことだと思います。
たくさんのセラピストがいる中で、自分を選んでくれる。
「やっぱり君が一番落ち着く」
「ほかの人じゃダメなんだよね」
そんなことを言われたら、なおさらうれしい。
仕事を認めてもらえた気持ちにもなるでしょう。
ところが、ある時から少し様子が変わってくることがあります。
そのお客様から予約が入らないと気になる。
LINEやDMの返事が遅いと気になる。
ほかのセラピストを指名したと知って落ち込む。
「最近来ないな」
仕事が終わってからも、その人のことを考える。
いつの間にか、自分がお客様を待つようになっている。
これは恋愛とは少し違います。
お客様のことが好きだから気になる、とは限りません。
もしかすると私たちは、「その人」ではなく、その人から必要とされている自分を失うのが怖いのかもしれません。
「好き」より「必要」に弱いことがある
人から、
「好きです」
と言われるのはうれしい。
でも、
「あなたがいないと困る」
「あなたじゃなきゃダメ」
と言われると、もっと強く心が動くことがあります。
なぜでしょう。
「好き」は相手の感情です。
でも「必要」は、自分の存在価値を証明してくれるように感じるからかもしれません。
私は、この人の役に立っている。
私は、この人に必要とされている。
だから、私はここにいていい。
人間には、そう思いたいところがあります。
仕事でも同じです。
「施術が上手ですね」もうれしい。
でも、
「あなたに会うために来ています」
と言われると、もっと深いところに届く。
技術ではなく、自分自身を認めてもらえたような気がするからです。
問題は、それが悪いということではありません。
うれしいものは、うれしい。
ただ、その言葉だけで自分の価値を確認するようになると、少し苦しくなります。

お客様が来ないだけで、自分まで消えたように感じる
いつも来てくれていたお客様が、突然来なくなる。
以前の記事でも書きましたが、理由はいくらでも考えられます。
忙しい。
お金を使えない。
生活が変わった。
ほかのお店に行っている。
単純にメンズエステに行く気分ではない。
本当の理由はわかりません。
ところが、相手から「必要とされること」に自分の価値を預けていると、予約がなくなった時に大きく揺れます。
「あんなに私じゃなきゃダメって言ってたのに」
そして、
「私はもう必要じゃないんだ」
と思う。
ここで起きているのは、売上が一件減ったということだけではありません。
自分を支えていた「必要とされている私」という物語が崩れているのです。
だから苦しい。
人間は、相手を失うだけでなく、相手の前にいた自分を失うことがあります。
他人は「自分の価値を映す鏡」になりやすい
哲学者ヘーゲルは、人間が自分自身を知るうえで、他者から認められることが重要だと考えました。
難しい哲学の話をしなくても、これは日常でよくわかります。
誰かに「面白いね」と言われる。
すると、自分は面白い人なのかなと思う。
「優しいね」と言われる。
自分は優しいのかもしれないと思う。
人間は、自分一人だけでは自分の姿がよくわかりません。
他人という鏡を使って、自分を見ています。
指名のお客様も、一つの鏡になります。
何度も来てくれる。
褒めてくれる。
必要としてくれる。
その鏡を見ると、「私は価値のあるセラピストなんだ」と思える。
それ自体は自然なことです。
でも、一枚の鏡だけを見続けると危うい。
その鏡がなくなった瞬間、自分の姿まで見えなくなるからです。

「必要とされること」と「大切にされること」は違う
もう一つ考えてみたいことがあります。
必要とされることは、必ずしも大切にされることと同じではありません。
「君じゃなきゃダメ」
一見、とても特別な言葉です。
でも、その言葉によってこちらが無理をするようになったらどうでしょう。
休みの日にも連絡を返す。
本当は嫌なのに要求を断れない。
「この人が離れたら困る」と思って、自分の境界線を少しずつ下げる。
それでは、必要とされるほど苦しくなってしまいます。
本当に心地よい関係なら、
今日は休みだから返事をしない。
できないことはできないと言う。
ほかのお客様も大切にする。
自分の生活も大切にする。
それでも関係は続くはずです。
相手から必要とされることより、自分を失わずにその人と関われること。
その方が、長く続く関係には大切なのかもしれません。
お客様のためだけに存在しているわけではない
接客業では、お客様を大切にすることが求められます。
でも、「お客様を大切にする」と「お客様のために自分が存在する」は違います。
あなたには、お店の外にも生活があります。
友人がいる。
家族がいる。
好きなことがある。
眠る時間がある。
何もしない時間がある。
セラピストではない自分がいる。
ところが、一人のお客様から強く必要とされると、その関係が世界の中心のように見えることがあります。
でも、その人との関係は人生の一部です。
全部ではありません。
これは冷たい話ではありません。
むしろ、一人のお客様に自分の全部を背負わせないということです。
「この人が来てくれないと私はダメ」
そうなると、お客様も知らないうちに、あなたの自己評価まで背負うことになります。
それは少し重い。
お客様はお客様として大切にする。
自分は自分として大切にする。
そのくらいの距離があっていいのだと思います。

「来てくれてうれしい」で止めておく
本指名のお客様が来てくれた。
うれしい。
それでいい。
「また来てくれないと不安」
まで進まなくていい。
褒めてもらった。
うれしい。
それでいい。
「この人に褒めてもらえない私は価値がない」
まで進まなくていい。
人間の心は、うれしいことをずっと続けたくなります。
だから、いつの間にか、
「うれしい」が「必要」に変わる。
そして「必要」が「なくなったら怖い」に変わります。
幸せだったものが、不安の原因になる瞬間です。
だから時々、
「私はこの人が好きなのかな。それとも、この人に必要とされる自分が好きなのかな」
と考えてみてもいいでしょう。
答えがすぐ出なくても構いません。
問いを持つだけで、少し距離ができます。
まとめ 必要とされなくても、あなたは消えない
指名のお客様から、
「あなたじゃなきゃダメ」
と言われる。
うれしいと思います。
そのうれしさを否定する必要はありません。
ただ、その言葉に自分の価値を全部預けなくていい。
今日、指名された。
うれしい。
来週、予約が入らなかった。
少し寂しい。
でも、あなた自身の価値まで上下したわけではありません。
他人から必要とされることは、人間にとって大きな喜びです。
だからこそ、少し注意が必要なのだと思います。
必要とされることが、自分の存在理由になりすぎないように。
お客様は、あなたの価値を証明するために来店しているわけではありません。
そしてあなたも、誰かから必要とされるためだけに働いているわけではありません。
「あなたに会いたかった」と言われたら、
「ありがとう。私もうれしい」
それくらいが、ちょうどいいのかもしれません。
相手を大切にする。
でも、自分の価値まで相手に預けない。
人と長く付き合うというのは、近づくことだけではなく、そんな小さな距離を残しておくことでもあるのだと思います。
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